丸藤葡萄酒工業株式会社 R【Rubaiyat】棟

M社 / 2020

スタートは2009年でした。上の段(場内の一番高い位置の作業場)は屋根が無く、木造の小屋に農機具や収穫箱などが納められ、収穫保管場所や除梗仕込み作業は天候に左右されていました。夏はカンカン照りの炎天下で作業、嵐の日は作業にならず、仮設の屋根も吹き飛んでしまいます。4代目大村社長より安定した作業場と貯蔵庫の環境を確保したいとの相談がありましたが、既存建物と建築基準法の齟齬解消方法の検討を先行する事となり、当時の作業場の実現は叶いませんでした。国内外の経済事情や、輸入輸出規定が変わり、地球温暖化、原材料確保の困窮など様々なを問題を乗り越えたこの10年、丸藤葡萄酒工業株式会社はようやくこのスタート地点に戻ってきました。創業130年の老舗ワイナリーの折り返し地点です。上の段は、ワイン醸造に情熱を掛ける、若きスタッフのエネルギーの象徴となりながら勝沼の景観を更新した作業エリアとなりました。M家の芸術文化の象徴の場所となります。

丸藤葡萄酒工業1890年創業。「第一はこれをRUBAYAT ルバイヤット」と命名、ペルシャ十一世紀天文学者詩人 Omar Khayyám オアマ・カイヤムの詩集の名にて、原名はルボウイヨウトと発音するが、ルバイヤットの方が語呂もよく通りがよく、ブドーの原産地の人にて非常に葡萄酒の好きな詩人でブドー酒と美女とを歌つた詩が多く卋(世)界的大詩人の一人で、日本のインテリは皆その名を知る故、ルバイヤットと名附けて発売したら、必ず「やったな」と思ふでせう。日夏耿之介」丸藤葡萄酒工業株式会社HP  ルバイヤート(四行詩)の由来 より

R棟はスタッフが主人公です。
冬 ぶどう畑へ剪定に出かけます。
春 苗木や圃場整備の準備をします。
初夏 誘引や芽欠きをするため畑へ出かけます。SSに乗って防除を繰り返します。モアに乗っての草刈りも大変です。
夏秋 白はソービニヨン・ブランの収穫から始まりシャルドネ、甲州・・赤はメルロ-、カベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルド・・・
R棟での仕込み作業 スタッフの大奮闘の場です。
秋~ そうしてスタッフの愛に包まれたぶどうたちは、優しい音を紡ぎながら、タンクで、樽でワインへと成熟していきます。
R棟は今日のスタッフのぶどう愛が集結する場所です。R棟の格子ガラスからは、一隅を照らすスタッフ一人ひとりのエネルギーが大きな光となって周囲を照らします。夜になると深紅の“R”の文字が闇に浮かび、藤井の道しるべとなります。それは、“勝沼のワイン造りにおいて、路なき路を暗闇から手探りで切り開いた先駆者達の勇気”への敬意を表します。

元々は作業エリアに屋根が無かったため、貯蔵庫と作業場として深い軒を出しました。近年の地球温暖化と南アルプスに沈む夕日により、勝沼の夏は格別に暑い!ピロティとはいえ、収穫されてきて仕込みまでの葡萄を屋根から放射される輻射熱や西日から守らなければならない。鳥鼠害にも気を配り、断熱材入りのフラット天井仕上げに。おかげで炎天下でも軒下は大分涼しい。軒天はストラクチャーの鉄骨梁現しとし、空に向かって伸びるぶどう棚の幹をリズミカルに表現。柱梁ともDICフランスの伝統色ボルドー・フォンセにて赤ワイン色に仕上げています。正面にはコンクリート打ち放し壁にRubaiyatの「R」が光る。貯蔵庫の窓は、台形の格子を施し、西からの直射日光をさえぎり光は取り入れる。夜には格子窓から夜空へ柔らかな光を放つ。R棟は切妻の妻入りとし、屋根と軒の勾配をわずかに変えて、お蔵のファサードも併せ持つ。勝沼藤井の切妻緩勾配連続家並と石垣の景観を守ります。

貯蔵庫内部。樽貯蔵、タンク貯蔵、瓶貯蔵などフレキブルに温度対応可能にするため、床・壁・天井とも高断熱仕様としています。腰壁は耐衝撃のコンクリート打ち放し。壁天井は不燃内装イソバンド。床は水性ウレタン樹脂モルタル塗り、空調完備。

勝沼藤井の屋並