登録有形文化財 村松家住宅 総門・塀リノベーション

M邸 / 2019

かつて村松家が隆盛を誇っていた幕末に、駿信往還に面した長屋門の扉が、ひっそりとお蔵に仕舞われていました。ツガ材の框戸は傷んだ部分はありましたが、その役目を再び総門の扉として担ってもらう事を現御当主に承諾していいただきました。ここに村松家の新趣の気性をデザイン。伝統的な景観と新しい街並みのあり方を『建築の複合と対立』として表現しました。

お蔵に仕舞われていた長屋門の門扉

スタディ模型
幕末から明治大正期に地域社会をどう変えていくかという、新しい日本近代化へ向けた村松家の挑戦・・・当時新しい気運を持った大勢の人々が村松家の門をくぐりました。御当主のアールヌーボーに対する想いも強い。門のカタチはこれらを象徴しており、門構えという門の重いイメージを軽くして開かれた門にしたい作家・無要の思いが込められています。

総門小屋仮組。ハマグリの形

扉補修、補強。既存扉の四方にブビンガ框を回し補強。

総門小屋組み建て方。ハマグリ型のアーチと来光が美しい。

「清吟書屋」清らかな詩を吟ずる場所。村松健斎は文人画人のパトロンでした。初代徽典館学頭・友野 霞舟の袋戸棚襖絵、蕪城秋雪の水墨襖絵、山岡鉄舟扁額などがあり、画人文人が交流、滞在していました。「清吟書屋」とは村松健斎が自らを、また書斎の雅号としたもの。ハマグリアーチのトラス棟梁の圧縮材に、この雅号を刻みました。

延段石割付
屋敷内に敷いてあった敷石を使い、延段を組みました。

リニューアルされた門扉。旧ツガ材の腐朽部分は取り除き、新ツガ材にて部分補修を行いました。扉自体の強度及び車両の出入りも考慮して開口幅を広げるため、建具四周囲にブビンガ框を廻しました。乳金物は既設を使用し、不足分は京都の金物屋より取り寄せています。

梶の葉
村松家の家紋は梶の葉で、諏訪大社の神紋でもあります。
図は座敷廊下垂れ壁に漆喰型抜きに彩色された模様。

総門土間仕上げは、家紋の「梶の葉」と、村松家が自生していたドクダミを漢方薬として処方していた「ドクダミの花」をモチーフに展開しています。主屋、商家蔵の古瓦を材としてモチーフ下書き上に敷き並べモルタルで固定、豆砂利を接着剤共流し込みました。古瓦は平瓦、平唐草、のし瓦、巴瓦の小口をカットして使用しています。

総門近景
コンクリート打ち放しの袖壁、旧長屋門扉をリニューアル。小屋組み、ガラス屋根は村松健斎が主屋清吟書屋2階増築を行い連続アーチ窓を取り入れた頃のアールヌーボーの趣。棟梁はハマグリアーチのトラス構造。「開かれた門」の趣旨で軽い屋根としています。

村松家の四季(御当主撮影)