寂助~時間の無い家(近藤乾年アトリエ)

Kアトリエ / 1997

愛宕山の山腹にあるこの住まいは、日本画家・近藤乾年が「愛宕山画塾」を設けた創作の場です。乾年は富士山が見える地ではなく、岩清水が湧くこの場所に魅了され、山梨中央銀行の頭取から譲り受けました。湿気で傷んでいた主屋ですが、彼が愛した夕日や盆地の風景、家族への想いを再現し、アトリエを「時間の無い」無次元の空間として蘇らせました。玄関正面のもみぢの存在を位置づけ、訪れる人々に乾年と現オーナーの想いを伝えることが我々の使命です。

乾年さんが植え愛でたであろう、玄関の正面窓から覗いた控えめなもみぢは、調査に一歩入った途端呼びかけてきました。「ココニイルワタシヲオモイダシテ。イマモココ二イマス。」ガラス窓をより大きくしてその存在を訪れる人々に周知する事が我々のミッションに。その秋想いに答える様に、乾年さんのアトリエを深紅の霞で満たしてくれました。

湿気がこもりかなり傷んだ主屋でしたが、乾年が愛しただろう沈みゆく夕日と盆地の色のうつろい、四季折々の花々、玄関に入ると真正面に映える深紅のもみぢ、愛する家族・・今いきているこの一瞬一瞬を大切に描写した乾年の想いを「時間の無い」アトリエに無次元に託します。

雑誌:晴耕雨読よりエッセイ 高橋辰雄「近藤乾年の愛宕山画塾」
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